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東京高等裁判所 昭和31年(ラ)572号 決定

抗告人(異議申立人) 松本堅雄

主文

本件抗告はこれを却下する。

理由

抗告人は静岡家庭裁判所沼津支部に、亡田中通陽を事件本人(委託者)とし、抗告人を受託者とする養子縁組届出委託の確認を求め、同裁判所が右事件につき、昭和三一年四月五日にした申立却下の審判に対し、同年五月一九日附異議申立書と題する書面を以て、その不服を申立てた。しかし右審判に対する不服申立方法は即時抗告に限るのであり(戸籍法第一三八条第二項第三項、家事審判決第一四条、特別家事審判規則附則第三項)、異議の申立は法の許さないところである。そこで抗告人のいう異議の申立というのも、これを合理的にとれば、右審判に対する不服の申立、即ち即時抗告の申立と解するのが相当であり、原裁判所もこれと同様の見解の下に本件記録を当裁判所に送付したものである。

そこで本件抗告の適否について考えてみるのに、右のような審判に対する即時抗告の期間は二週間であり(家事審判法第一四条)、その期間は、即時抗告をすることができる者が、審判の告知を受けたときは、告知を受けた日からこれを起算すべきである(家事審判規則第一七条)が、本件では抗告人は原審審判の審判謄本の送達を受けているのであり、その送達の日は昭和三一年五月五日である(この事実は本件記録上明かである)。そうすれば本件即時抗告は右審判謄本の送達の日である五月五日から起算し、初日を算入せずして二週間以内、即ち同月一九日までにこれをするを要するものである。然るに本件抗告状(即ち前記の異議申立書)は、本件記録によれば、抗告人より小石川郵便局昭和三一年五月一九日午後零時より六時まで受附の書留速達郵便を以て原裁判所に送達されたもので、右郵便物は翌五月二〇日午前零時より八時までの間に沼津郵便局に到着し、同日午前七時三〇分配達のため原裁判所に持参せられたが、受取人不在の故を以て持帰られ、翌五月二一日に至つて原裁判所に配達せられたものであることが認められる。従つて右抗告状提出の日を右配達の五月二一日と見れば勿論、仮りにこれを当初配達のため持参せられた同月二〇日と見るとしても、本件抗告は抗告期間を徒過した不適法な抗告と認めるの外はないのであり、本件はその実質的当否の判断に入ることができないものである。

よつて本件抗告を却下すべきものとし、主文の通り決定する。

(裁判官 薄根正男 奥野利一 山下朝一)

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